これまでの自己血糖測定(SMBG)は、指先を針で刺して採取する血液を使って測定する方法が一般的でした。しかし、この新しいシステムでは、わずか2μLの涙を検体として使用し、非侵襲的に血糖値を測定できます。開発チームを率いる国立国際医療研究センター・国保旭川病院の佐藤健太郎医師は「涙中のグルコース濃度と血糖値の相関係数は0.91と高く、従来の採血法と同等の精度を確認しました」と説明します。
このデバイスは、スマートフォンに接続可能な超小型光学センサーと専用アプリケーションから構成されています。検査時には、涙を含ませた試験用テープをセンサーにセットし、アプリ上で測定を開始します。独自開発されたナノ構造光学センサーによって、涙中のグルコース濃度に応じた蛍光信号を検出します。
臨床試験では、1型および2型糖尿病患者計248名を対象に従来法との比較が行われました。その結果、空腹時血糖値の測定誤差は±7.8%以内、食後血糖値でも±9.2%以内という高い精度を示しました。特に注目されたのが尿微量アルブミン測定機能です。糖尿病による腎症を早期に見つけるためには、尿中のアルブミン量を定期的に調べることが重要です。このシステムでは、わずか10μLの尿検体で従来のELISA法と同等の検出感度(0.1mg/dL)を達成しています。
東京大学医学部附属病院での実証試験では、週3回の自己測定を行った患者グループで、HbA1cの変動幅が従来の採血法グループより38%小さかったことが確認されました。佐藤医師は「痛みのない検査により、患者の測定頻度が平均2.3倍になったことが効果の一因」と分析しています。現在、医療機器承認申請に向けて、更なる大規模臨床試験が進行中です。2026年中の実用化を目指しており、今後の海外展開も視野に入っています。
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